私が、野村萬斎さんのファンになったのは7年ほど前。
萬斎さんのことが気になると、すぐに舞台を観に行き、近場で日程が合う公演があれば頻繁に足を運び、私の休日はほとんど公演を観に行く予定で埋まっていた。
特別な曲
そうして、狂言について知りたくて本などで調べはじめてから、すごく見たかった演目がある。
それが、『三番叟』である。
狂言・能楽の歴史|文化デジタルライブラリー (jac.go.jp)
「三番叟」は元々、能『翁』の間に行われる。
能『翁』は近年、新年や舞台披きの場などで行われることが多い。『三番叟』だけで行われることも多く、天下泰平・五穀豊穣を祈る舞である。狂言師と能楽師にとっても特別な曲である。狂言師も数えられる程度しかこの曲は舞わないようだが、この特別な『三番叟』を他の狂言師にはないくらい舞ってきたのが野村萬斎さんである。
美しい舞
そして、念願だった萬斎さんの「三番叟」を初めて観たのは美術館で行われた特別な公演だった。
東京都現代美術館で「東京アートミーティング 新たな系譜学をもとめて 跳踊/痕跡/身体」のイベントで行われた。客席が限られた小さなスペース。間近で見た萬斎さんの身体の動きが美しかった。
私は以前、「美しい」という言葉は、女性または女性的な表現として使うと思っていた。しかし、女性的な動きを連想させるわけではないのだが、それとはまた違う次元にある美しさを感じる。
現代美術館で行われた現代アートとのコラボレーションのこの公演は、メディア・アーティストの高谷史郎さんが制作した映像と萬斎さんの舞が素晴らしくて素敵だった。
その後、能楽堂で行われる公演も観たが、『三番叟』はピンと張りつめた空気と後半部分の”揉之段”のテンポの良さが心地よい。
伝統にテクノロジーは必要か?
また、萬斎さんは数年前より東京オリンピックに向けて伝統文化を海外の方に広く知ってもらう活動の為、最先端テクノロジーとのコラボの『FORM 三番叟』も何度か行っていた。
私の感想としては、萬斎さんを見たいのにいろんな映像が入ってくるので、画面に完全に酔ってしまった。眩しいライトも苦手なので、私はこのコンセプトには合わないなと感じた。伝統を見せるのに最先端を掛ける必要があるのだろうか。当時は、オリンピック開閉式ありきだから仕方ないだろうとは思っていた。
多くの方に見てほしい
とにかく、萬斎さんの『三番叟』は ファンではなくても一度観た方がいいと思う。
能楽大成以前から神事が芸能化されたもので、日本の芸能の真髄です
と著書でも書いてあるように、歌舞伎、文楽、日本舞踊にも『三番叟』はあるがすべてここから始まる。ストーリー性はないので、言葉を気にすることもなく構えず観れるので、機会があったら是非生で見て頂きたいですね。
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